身体と対話する整体コラム Vol.19
最近はテレビやSNSでも「体幹を鍛えましょう」という言葉をよく耳にします。 腰痛予防、姿勢改善、スポーツのパフォーマンス向上など、体幹にはさまざまな効果があると言われています。
しかし実際に、 「そもそも体幹ってどこ?」 「腹筋を鍛えること?」 「とりあえずプランクをやればいいの?」 と聞かれると、意外と曖昧な方も多いのではないでしょうか。
整体の現場でも、このような疑問を抱えている方はとても多いです。今回は体幹の基本をわかりやすくお伝えしながら、トレーニングの「最初の一歩」について考えてみたいと思います。
体幹とは「胴体」のこと

体幹とは簡単に言えば、頭・腕・脚を除いた「胴体部分」すべてを指します。 具体的には、お腹、背中、胸、骨盤のまわりなどが含まれます。
「体幹=腹筋」と思われがちですが、実際には多くの筋肉がチームとして協力しながら働いています。その中でも、特に身体の深いところで重要な役割を果たしているのが以下の4つです。
- 横隔膜(呼吸を担当する、いわば天井の筋肉)
- 腹横筋(お腹をぐるりと包むコルセットのような筋肉)
- 骨盤底筋群(骨盤の底から内臓を支える床の筋肉)
- 多裂筋(背骨に寄り添い、安定させる壁の筋肉)
これらは「インナーユニット」と呼ばれ、まるでお腹の中に安定した「箱」を作るようにして、身体の中心を支えています。
体幹の役割は「動かすこと」ではなく「支えること」
多くの方が「体幹を鍛える」と聞くと、「割れた腹筋を作る」「グッと力を入れて身体を動かす」というイメージを持っています。
しかし、体幹の本来の役割は「身体を安定させること」です。
たとえば歩くとき。脚を動かしているのは脚の筋肉ですが、その土台となる体幹がグラグラしていると、歩く力がうまく伝わりません。 家を建てるときに土台が重要なのと同じで、体幹は身体全体を支える「基礎工事」のような存在なのです。
体幹がうまく働かないとどうなる?
体幹という土台が十分に機能していないと、身体は外側の筋肉を過剰に緊張させてバランスを取ろうとします。その結果、以下のような不調につながることがあります。
- 猫背や反り腰になりやすい
- 肩や首にいつも力が入ってしまう
- 腰痛を繰り返す
- 疲れやすい
ただし、これらは「筋力が足りないから」とは限りません。 整体の現場で多くの身体を拝見していると、「筋肉が弱い」というよりも、「必要な筋肉をうまく使えていない(意識できていない)」ケースがほとんどです。
つまり体幹は、鍛える前にまず「感じる」ことが何よりも大切なのです。
体幹トレーニングの第一歩は「呼吸」から
体幹トレーニングといえばプランクなどのハードな運動を思い浮かべますが、その前にぜひ試していただきたいのが「呼吸」です。
【お腹の呼吸チェック】 仰向けに寝て、両膝を軽く立てます。
- 鼻からゆっくり息を吸う
- お腹の中に「風船」が入っているのをイメージし、それが前後左右、全方向に均等に膨らむ感覚を探す(お腹の前側だけでなく、脇腹や背中まで360度広がるように)
- 口からゆっくり息を吐く
- 風船がしぼんでいくのに合わせて、お腹が自然と内側へ薄くなっていくのを感じる
これだけです。
先ほどご紹介した「インナーユニット(横隔膜や腹横筋)」は、呼吸と深く連動しています。呼吸が浅く、これらの筋肉が硬くなっている状態では、どれだけ頑張って激しいトレーニングをしても体幹は十分に働いてくれません。
「固める体幹」より「支えられる体幹」へ
体幹を意識し始めると、「常にお腹に力を入れ続けなければ」と身体を力ませてしまう方がいます。
しかし、人間の身体は本来、必要なときにだけ力が入り、不要なときには自然と抜けるようにできています。 本当に良い体幹とは、いつもガチガチに固まっている身体ではなく、「状況に応じて、しなやかに支えてくれる身体」です。
立つ、歩く、座る、呼吸する。 そんな日常の何気ない動作の中で、過剰な力を入れずとも自然に働いている状態こそが理想的です。
まとめ
体幹とは単なる腹筋のことではなく、身体の中心を支える「仕組み全体」のこと。 そして体幹トレーニングの第一歩は、激しい運動ではなく、自分の呼吸や身体の感覚に気づくことです。
「鍛える」前に、まずは「感じる」。 それこそが、あなたの身体との対話の始まりです。
まずは今日、深呼吸をひとつ。 あなたの体幹は今、どのように動いているでしょうか。少しだけ、身体の内側の声に耳を澄ませてみてください。
▼おすすめ関連記事
- 【Vol.10】姿勢と呼吸の深い関係|「横隔膜」がサボると、体はどうなる?
- 【Vol.12】反り腰の人が疲れやすい理由|腰ではなく呼吸と腹圧の話
- 【Vol.17】首・肩の緊張を抜くストレッチ|呼吸とセットで整える